iCONM KiDS あいこんきっず

お知らせ

2025.11.10

洗足学園中学高等学校の土曜教養講座で
「歩行の価値」についての授業

11月8日、洗足学園中学高等学校(川崎市高津区)で中学1年生~高校2年生を対象とした土曜教養講座の1コマを使い、普段あたりまえのように歩くことができることの幸せについて考える授業を行いました。出席者は14名。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻の吉岡京子准教授による「股関節から考える健康長寿とレジリエンス ~100歳まで歩ける股関節の健康づくり」と題する講義を受けた後、「もし自由に歩くことができなくなったら?」というテーマについて、2班に分かれて話し合いました。中学生チームのファシリテータを吉岡研究室の横堀花佳・特任研究員が、高校生チームをiCONMの神田循大・特任研究員(CHANGE/研究開発課題3サブテーマリーダー)が務めました。「学校や遊びにも行けなくなるのは悲しい」といった個人的なことから、「車いすをサポートする仕組み」、「買い物に行きづらくなった高齢者も含め、ネット通販をもっと誰もが使えるようにする」、「ヘルプマークの使用が認められない軽度の方にも<ちょっとヘルプマーク>を」などといった社会的な課題にまで、どんどん話が膨らみました。寝たきりの原因ともなる変形性股関節症は、その7割が乳児期の臼蓋形成不全(大腿骨骨頭がはまっているくぼみ部分=「臼蓋」の形が浅い)が原因であった可能性が示されています。臼蓋形成不全があっても、自覚症状がないまま長年負荷がかかり続けた結果、中高年になって初めて痛みや違和感を感じて受診し、変形性股関節症と診断されるケースが後を絶ちません。進行すると就寝時や日常生活の中でも激しい痛みを感じるため、生活の質は大きく損なわれます。吉岡先生の研究室では、東大医学系研究科整形外科教室や工学系研究科、各地の小児整形外科医、行政保健師らと連携し、超音波検査を用いた予防や早期発見法の開発を進めています。この取り組みは、World Evidence-Based Healthcare Day のグローバルイニシアチブとしても認められています。

https://worldebhcday.org/blog/2025/prevention-and-ultrasound-screening-universal-nurse-led-hip-health-model

出席した生徒たちからは、「今日学んだことを家族に伝える」「違和感があったらすぐに病院へ行くよう勧める」など、自分たちの老後を見据えるとともに、両親に加え、一緒に暮らしていない祖父母の健康を気遣う言葉も聞けました。
最後は、横堀研究員と神田研究員がキャリア形成に関する交流会を行い、研究者を志した動機や保健師などの資格について、博士号を持つ意味など将来に関する質問に回答したほか、両研究者がCHANGEで取り組むや専門性を跨いだ研究の重要性についても語りました。
2時間半に及ぶ長時間の授業でしたが生徒たちの集中は途切れることがなく、真剣に将来を意識した発言を行い、「歩行の価値」を十分に理解したようです。

左上:股関節に関する講義をする吉岡京子・准教授
右上:もし自由に歩くことができなくなったら? について話しあう生徒達
左下:工学研究者として看護領域へ越境することのだいご味を語る神田循大・研究員
右下:保健師として自治体で働いた後、東大で看護X工学の研究を行おうとする自身のキャリアについて語る横堀花佳・研究員