2012 年 3 月 26 日更新

片岡一則教授がフンボルト賞を受賞

東京大学大学院工学系研究科
東京大学大学院医学系研究科

2012 年 3 月 23 日 授与式
写真右:フンボルト財団理事長 Prof. Helmut Schwarz
東京大学大学院工学系研究科 片岡一則教授(医学系研究科教授 兼担)がドイツのアレキサンダー・フォン・フンボルト財団より、本年度のフンボルト賞を授与されることが決定した。同賞は、ドイツ政府の国際的学術活動機関であるアレキサンダー・フォン・フンボルト財団が創設した賞である。人文、社会、理、工、医、農学の各分野において、基本的な発見もしくは新しい理論によって後世に残る重要な業績を挙げ、今後も学問の最先端で活躍すると期待される国際的に著名な研究者に対して授与されるもので、本賞に加えて5万ユーロの賞金およびドイツでの滞在費用が支給される。本学では、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊特別栄誉教授や元東大総長の有馬朗人名誉教授などが過去に受賞しており、これまでの受賞者のうち40名以上がノーベル賞を受賞している、ドイツで最も栄誉のある賞とされており、片岡教授は高分子化学分野での受賞となった。授賞式は本年の3月23日にドイツにおいて行われ、さらに受賞者は、同6月にドイツ大統領官邸ベルビュー宮殿で行われる大統領主催のレセプションに招待されている。

今回の受賞の対象となった研究は、「高分子ナノテクノロジーに基づく標的指向型ドラッグデリバリーシステム(DDS)の創出」であり、特に、高分子型医薬の難治がん治療における優れた効果の実証を通じて、ナノ医療(ナノメディシン)という新分野の確立をもたらしたことが高く評価された。片岡教授は、精密合成された高分子のナノ分子集積技術を駆使することによって、ウイルスサイズ(約50ナノメートル)の薬物キャリア(高分子ミセル)を世界に先駆けて創出し、従来の化学療法では治らない難治固形がんの標的治療を成功させた。現在、4種類の異なる制がん剤を内包した高分子ミセルが、国際的な(日本、米国、欧州、アジア)臨床第II相試験※にまで進んでおり、膵臓がんをはじめとする難治がんの薬物治療にブレークスルーをもたらすものと期待されている。さらに、この様な高分子キャリアの遺伝子や核酸医薬デリバリーにおける有用性をも実証し、2009年度からは、日本のトップ30の研究者に選ばれ、内閣府最先端研究開発支援プログラムにて、産業界・大学・研究所からなる大規模研究プロジェクトである「ナノバイオテクノロジーが先導する診断・治療イノベーション」を率いている。

※臨床第II相試験:比較的少数の患者に実際に薬剤を投与し、安全性、有効性などの検討を行う試験。より大規模におこなわれる第III相試験の前に用量、用法などを検討するのが主な目的となっている。第III相試験の後、規制当局に承認されると医薬品として販売することが可能となる。