東京大学大学院工学系研究科片岡一則教授(医学系研究科教授 兼担)が、財団法人茨城県科学技術振興財団(理事長:江崎玲於奈)より、第9回江崎玲於奈賞を授与されることが決定しました。同賞は、ナノテクノロジー分野において世界的に評価を受ける顕著な研究業績を挙げた者に授与されるもので、授賞式は2012年10月につくば市にて開催されます。
受賞の対象となったのは、「高分子ナノ構造を用いた薬物・遺伝子キャリアの開拓と難治疾患標的治療への展開」です。片岡教授は長年の研究により、精密に設計された一連の機能高分子を合成、自己集積させることにより、ウイルスに近いサイズ(数十ナノメートル)の球殻状(高分子ミセル)の薬物運搬体(キャリア)を創り、制がん剤を内包させることによって、難治固形がんの標的治療に有効であることを実証しました。この成果として、現在4種類の異なる制がん剤を内包した高分子ミセルが、国際的な臨床試験にまで進んでおり、膵臓がんをはじめとする難治がんの薬物治療にブレークスルーをもたらすものと期待されています。さらに、この様な高分子キャリアが、遺伝子や核酸医薬デリバリーにも有用であることを実証するなど、有機化学におけるナノテクノロジーを活かして、薬学や医療の新領域を開拓しました。